TSRデータベース指標 ~自由に条件を設定し、経済全体の状況や推移を迅速に把握できる統計ツール~
分析可能な指標
売上高前年同期比/負債総額前年同期比
統計に用いているデータについて
- 対象はTSRデータベースに登録されるすべての企業情報・財務情報を利用しており、前年比を計算できる企業が対象となっています。
- 指標は、各社決算月の通期決算データを前年同期と比較して算出し、その企業群の四分位数を採用しています(※1)。四分位数は、平均値と比べ極端に大きな数字に影響を受けにくいという特徴があります。
- データは毎月月初に更新されます。TSRデータベースへの登録が一定数に達すると集計対象となり、概ね決算月から2~3カ月経過時点から集計が開始されます。この結果、毎月初めに2~3カ月前を決算期末とするデータの集計結果が表示され、それ以降の6カ月程度に亘って集計結果の更新が継続されます(※2)。
- 1. 四分位数とは、データを小さい順に並べて、4分の1ずつに分けるパーセンタイルのことで、下から順に25パーセンタイル(第1四分位数ともいう)、50パーセンタイル(第2四分位数または、中央値ともいう)、75パーセンタイル(第3四分位数ともいう)のことです。例えば、25パーセンタイルとはそのデータの25%がその値より小さいことを意味します。データを50パーセンタイル(中央値)より下位のグループと上位のグループに分けると、25パーセンタイルは下位グループの中心となる値、75パーセンタイルは上位グループの中心となる値となります。
また、75パーセンタイルと25パーセンタイルの差は四分位範囲と呼び、データの分布の広がりを表し、上位と下位の格差を示しています。
四分位範囲の50パーセンタイル(中央値)の位置は、分布の歪みを表しており、例えば、中央値と75パーセンタイルの距離が近く、25パーセンタイルとの距離が遠い場合は、分布の中心が上位グループ側に歪んでおり、下位グループの分布が広がっていることを示しています。 - 2. この集計・更新方法は、各社の決算発表とTSRのデータベースへの登録までのタイムラグがあるため採用したものです。例えば、3月期決算の企業は、4・5月の企業数は少ないが、徐々に増加し、9月で概ね網羅されることになります。
分析の事例
企業活動に関する公的統計としては、鉱工業生産指数や第3次産業活動指数等の各業種動向を計測した指標が存在しますが、TSR企業データベース指標はこれらの公的統計と整合的な結果を、後述の通りより詳細な情報と共に提供します。
図1は、経済産業省が公表している第3次産業活動指数を参照する事で、飲食サービス業の活動水準及びその変化を確認したものです。同図から、例えば、新型コロナウイルスの影響によって、飲食サービス業の第3次産業活動指数の前年比率が2020年2月に大きく落ち込んだ後、2021年3月からは大きく改善していることが分かります。
図1
図2は、同様の視点から、宿泊業・飲食サービス業に属する企業を対象としてTSR企業データベース指標を示したものです。宿泊業・飲食サービス業の売上高対前年比を決算期末毎に計測した当該指標の推移から、2020年2月から特に中央値以下の伸び率が低下し始めた後、2021年3月から上昇傾向に転じていることが分かります。
図2
TSR企業データベース指標の公表時期は、上記の事例では、公的統計に比して1カ月ほどのラグを伴っていますが、公的統計では十分に把握することが難しい詳細な情報を取得することが出来ます。例えば、既述の通り、25%点、中央値、75%点の様な形で計測することで、企業間での活動水準の差異を把握することが可能となります。この他、売上高以外の総負債などの推移に着目した企業活動の把握を幅広く行うことが出来るほか、業種に加えて企業規模で絞り込んだ計測を行うことも可能です。
図3と図4は、売上規模が5億円未満の企業(図3)と5億円以上の企業(図4)を分けて描画したものですが、売上規模が5億円以上の企業は5億円未満の企業に比べて、新型コロナウイルスの影響後の復調がより顕著であることなどが分かります。
図3
図4
- TSRデータベース指標のグラフは、デザインやフィルター条件などが予告なく変更なる場合がございます。
- TSRデータベース指標は、早稲田大学宮川研究室とTSRとの共同研究成果に基づいています。