海外企業の与信管理の必要性
海外企業との取引においては、様々なリスクを考慮した適切な判断と迅速な対応が求められます。しかし、距離が離れているということもあり現地確認や情報収集など密な管理が難しい、国により商習慣や財務基準が違うため国をまたいだ適正なリスク判断が困難など国内企業には無い課題もよく聞かれます。そこで、TSRでは海外企業との取引において気を付けるべきポイントや課題を解決するソリューションなど、海外ビジネスにおける与信管理のヒントとなる情報をご提供いたします。
今回は、海外取引をおこなう前に知っておきたい情報や、取引の各フェーズにおける与信管理のポイントなどを説明いたします。
海外で発生している企業の変化
まず最初に、海外企業の与信管理の難しさをご理解いただくため、北米を例にどのぐらい企業の変化が発生しているか、世界最大5億件超の企業情報を提供しているDun&Bradstreet(D&B)のデータをご紹介いたします。
北米で起きている企業イベント
D&B「IMPROVING PERFORMANCE ACROSS THE ENTERPRISE」より
これらのイベントは、どの程度のスパンで発生しているものかわかりますか?実は、ここに挙げた数字はたったの60分間で発生している数となっています。
このように、北米だけでも60分間でこれだけの企業イベントが発生していますが、これが24時間、そして世界中となるとその数が膨大になるのは容易に想像できるかと思います。そして、その中から自社に関係する企業の変化のみを迅速かつ正確に察知するには、相応の体制を構築しておかなければならないと言えるでしょう。
リスク管理の盲点
企業の様々な変化は、皆さまの取引先においても同様に発生している可能性がありますが、特に海外企業となると情報収集の困難さなどから、正しい情報がリアルタイムに届かない懸念があります。実際、海外においては突然取引先がいなくなるというケースが多く発生しています。「長年の付き合いで相手をよく知っているから大丈夫」と思っていても、明日にはその取引先は倒産してしまうかもしれません。
ここでは、D&Bが調査した焦付債権発生時における新規取引先と既存取引先の割合をご紹介いたします。
焦付債権の新規/既存取引先の割合
初めて取引する新規取引先の方が多く焦付債権が発生しているというイメージがあるかもしれませんが、D&Bの調査によると、焦付債権の80%は既存取引先から発生しています。新規取引開始時に念入りに調査して問題が無かったため、取引開始後のリスク把握がおろそかになり、取引先の変化を見逃してしまっていたというケースが多く発生しているのではないかと考えられます。
このことから、取引量や取引額が拡大していく取引開始後の平常時こそ、小さな変化を見逃さない与信管理体制を構築しておくことがいかに重要かがお分かりいただけたかと思います。
取引フェーズごとに抑えるべきポイント
では、実際の海外取引においてどのような与信管理をおこなうべきか、取引フェーズごとにご説明いたします。
フェーズ | ①取引先選定/検討時 | ②取引開始後の平常時 | ③リスク悪化時・要注意先特定時 |
---|---|---|---|
ポイント | ・企業の実在性や財務情報を調査 ・コンプライアンスチェック ・カントリーリスクの把握 |
・全体管理で高リスク群特定 ・モニタリングでリスク察知 |
・要注意先の重点調査 ・取引停止や代替取引先検討 |
有効なサービス | ダンレポート D&B Onboard カントリーレポート カントリーリスクレポート 世界の国別リスク情報 オンライン |
D&B Finance Analytics D&B Risk Analytics |
コンプリヘンシブレポート D&B Hoovers |
①取引先選定/検討時
新規の取引先については「この企業はきちんと取引出来る相手なのか?」をしっかりと調査し、慎重な判断をすべきだと言えます。
注目すべきポイントは複数に亘りますが、特に下記3つのポイントを抑えたうえで慎重に交渉を進める必要があると考えます。
注目すべきポイントと対応するTSRサービス
- 企業の実在性や支払い状態などの財務関連情報、倒産等事業停止のリスクが無いか、海外企業調査レポート「ダンレポート」で個社詳細情報をくまなくチェック。
- 取引先や利害関係者に犯罪者がいないか、EU等の制裁リストに該当者はいないか、オンラインコンプライアンスチェックツール「D&B Onboard」で資本系列やスクリーニングなど、コンプライアンスリスクをチェック。
- 取引先の所在国が抱える政治や経済などの問題が、取引に影響を及ぼす可能性は無いか、カントリーレポート、カントリーリスクレポート、世界の国別リスク情報 オンラインでその国や地域のリスクをチェック。
なお、これらのリスクの詳細は別の機会にご紹介いたします。
②取引開始後の平常時
取引開始後においては取引先をモニタリングし、重要な変化が発生した際は迅速に情報を察知することが必要です。また、自社の取引先がどういったリスクをどの程度抱えているかを日ごろから把握しておくことも重要です。しかしながら、海外取引先が多くなるほど取引先管理は煩雑になり、工数がかかるばかりでなく重要な変化を見落としてしまう懸念もあります。
このように手間のかかる取引先管理も、例えば海外取引先与信管理オンラインサービス「D&B Finance Analytics」に搭載されている取引先の分析、モニタリング&アラート機能を用いることで取引先の変化を迅速に察知し、包括的な取引先管理を実現できます。
③リスク悪化時・要注意先特定時
例えば実質的支配者の変動やリスク指標の悪化など、取引先に重要な変化があった場合は最初の取引検討時と同様に、改めてレポートなどを活用し深堀り調査する必要があります。ダンレポートの情報に加え、国や地域独自の注目すべき情報が追加掲載されている詳細な海外企業調査レポート「コンプリヘンシブレポート」なら、さらに詳しい情報を入手することができます。
また、調査の結果新たな取引先や代替サプライヤーを検討することになった場合は、世界最大級オンラインビジネスデータベース「D&B Hoovers」で新パートナーを探すなど、早急に次なる行動へ移ることが重要です。
ここまでご説明したことをまとめると、日ごろから確かな情報を得られるソースの確保、リスクを見抜くシステムの構築、リスク発見の際に迅速に対応できる体制整備の3つが重要であると言えます。TSRではお客さまごとに異なる課題やビジネスモデルに合わせ、国内最古の信用調査会社として培ってきたビジネスの知見を活かし、海外取引における最適なリスク管理ソリューションをご提案することができます。海外企業との取引に少しでも不安を感じている場合はお気軽にお問い合わせください。
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