全国企業倒産状況

2024年4月の全国企業倒産783件

4月の企業倒産 4年ぶり700件台、増加率は今年最高の28.3%増


 2024年4月度の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が783件(前年同月比28.3%増)、負債総額が1,134億2,300万円(同44.3%減)だった。
 件数は、2022年4月から25カ月連続で前年同月を上回った。連続記録は歴代3番目の長さ。4月としては3年連続で前年を上回り、2020年(743件)以来、4年ぶりに700件台に乗せた。
 負債総額は、2カ月連続で前年同月を下回った。負債5億円以上10億円未満が26件(前年同月17件)、同10億円以上が22件(同13件)と中堅クラスに広がったが、同1億円未満は584件(構成比74.5%)発生、依然として小・零細企業を主体とした推移に変化はない。
 産業別は、8産業で増加した。卸売業97件(前年同月比46.9%増)、サービス業他264件(同38.2%増)、運輸業33件(同37.5%増)など、ウクライナ情勢や円安に伴う仕入コストの上昇や燃料高、人手不足などの影響が強い産業で増加率が大きい。

 コロナ禍から平時に戻り、企業業績は回復基調に転じている。だが、売上増は仕入債務の支払先行を招き、資金需要が旺盛になる。このタイミングでは、過剰債務を抱えた企業を中心に、新たな資金調達が難しい企業は売上増が資金繰り悪化に拍車を掛ける悪循環に陥りやすくなる。
 増勢をたどる企業倒産は、売上回復が遅れた企業の息切れ倒産や売上増に資金調達が追い付かない黒字倒産を交えながら、増勢ピッチを速めることが懸念される。



企業倒産月次推移


・形態別件数:破産が708件で、構成比は90.4%
・都道府県別件数:前年同月を上回ったのが30都道府県、減少13府県、同数4県
・負債額別件数:負債1億円未満の構成比74.5%、100億円以上が3カ月連続で発生
・業種別件数:建築材料,鉱物・金属材料等卸売業、飲食料品製造業などが増加
・従業員数別件数:従業員10人未満の構成比88.1%、11カ月連続で80%台
・中小企業倒産(中小企業基本法に基づく)の構成比は2カ月ぶりに100.0%

◇倒産データ分析:https://www.tsr-net.co.jp/news/data_analysis/index.html

産業別 10産業のうち、8産業で前年同月を上回る

 2024年4月の産業別件数は、10産業のうち、8産業で前年同月を上回った。
 最多はサービス業他の264件(前年同月比38.2%増)で、20カ月連続で前年同月を上回った。月次倒産に占める構成比は33.7%(前年同月31.3%)だった。
 このほか、建設業146件(前年同月比8.9%増)が16カ月連続、卸売業97件(同46.9%増)が7カ月連続、小売業80件(同33.3%増)が3カ月連続、運輸業33件(同37.5%増)が2カ月連続、製造業100件(同29.8%増)が2カ月ぶり、情報通信業33件(同22.2%増)が3カ月ぶり、不動産業23件(同21.0%増)が6カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 製造業は2023年10月(103件)以来、6カ月ぶりに100件台に乗せた。
 一方、農・林・漁・鉱業3件(前年同月比62.5%減)が、4カ月ぶりに前年同月を下回った。金融・保険業は前年同月と同件数の4件だった。
 各種コストアップが、企業の資金繰りに大きな影響を及ぼしている。

2024年4月 産業別倒産状況

主要産業倒産件数推移
主なサービス業他 倒産状況

主なサービス業他 倒産月次推移

地区別 9地区のうち、7地区で前年同月を上回る

 2024年4月の地区別件数は、9地区のうち、北陸、四国を除く7地区で前年同月を上回った。関東315件(前年同月比25.0%増)が、24カ月連続で前年同月を上回った。このほか、近畿190件(同28.3%増)が17カ月連続、中国32件(同39.1%増)が12カ月連続、東北40件(同60.0%増)と九州79件(同68.0%増)が6カ月連続、北海道20件(同17.6%増)が3カ月ぶり、中部85件(同25.0%増)が4カ月ぶりに、それぞれ前年同月を上回った。
 一方、北陸11件(同21.4%減)が6カ月ぶり、四国11件(同31.2%減)が2カ月ぶりに、それぞれ前年同月を下回った。

2024年4月 都道府県別倒産

※地区の範囲は以下に定義している。
東北(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)
関東(茨城、栃木、群馬、埼玉、千葉、東京、神奈川、新潟、山梨)
中部(長野、岐阜、静岡、愛知、三重)
北陸(富山、石川、福井)
近畿(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)
中国(広島、岡山、山口、鳥取、島根)
四国(香川、徳島、愛媛、高知)
九州(福岡、佐賀、長崎、熊本、大分、宮崎、鹿児島、沖縄)


当月の主な倒産

[負債額上位5社]
1.(株)ホクシンメディカル/兵庫県/医療機器販売、医療情報システムサービスほか/112億4,300万円/取引停止処分
2.(有)川越建材興業/三重県/土木工事ほか/36億円/破産
3.日本ファンド(株)/東京都/貸金業/26億1,600万円/破産
4.ウィル・エンジニアリング・テクノロジー(株)/大阪府/産業廃棄物処分業/24億円/取引停止処分
5.大栄鋼管(株)/東京都/鋼管管材卸/20億円/破産

人気記事ランキング

  • TSRデータインサイト

「戸建住宅」メーカー115社 増収増益 3年連続増収も、減益企業は半数に

全国の主要戸建メーカー、ハウスビルダー115社の2023年度決算(2023年4月期-2024年3月期)は、売上高8兆1,214億円(前年度比3.8%増)、利益4,728億円(同17.8%増)と増収増益だった。 2023年度の新設住宅着工戸数(持家+分譲戸建、国交省)は、前年度から1割減(9.9%減)の35万3,237戸にとどまった。

2

  • TSRデータインサイト

2024年の「早期・希望退職」募集1万人が目前 上場企業53社、人数非公開の大型募集相次ぐ

2024年1月から11月15日までに「早期・希望退職募集」が判明した上場企業は53社(前年同期36社)で、前年同期の約1.5倍のペースで推移している。集計の対象人員は、9,219人(同2,915人)と3倍に増加し、すでに2023年の年間社数、人数を上回った。

3

  • TSRデータインサイト

2024年1-10月「後継者難」倒産396件 後継者不在が深刻、年間最多の500件も視野

代表者の高齢化など、後継者不在による倒産が増勢をたどっている。10月の「後継者難」倒産(負債1,000万円以上)は49件(前年同月比32.4%増)発生し、1-10月の累計は396件(前年同期比10.3%増)と1-10月の最多を更新した。

4

  • TSRデータインサイト

「雇用調整助成金」の不正受給公表が累計1,446件 全国ワーストは愛知県、年商を上回る不正受給は31社

全国の労働局が10月31日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給件数が、2020年4月から累計1,446件に達したことがわかった。不正受給総額は463億7,025万円にのぼる。2024年10月公表は35件で、4月(23件)に次いで今年2番目の低水準だった。

5

  • TSRデータインサイト

船井電機「破産開始」への対抗、天文学的な成功率

船井電機(株)(TSR企業コード:697425274)の破産手続きが混沌としている。10月24日に東京地裁へ準自己破産を申請し同日、開始決定を受けた船井電機の破産手続きに対抗する動きが明らかになった。

TOPへ