海外与信管理で重点チェックすべき3つのリスク Vol.1 デフォルトリスク
「海外企業の与信管理の必要性」でご説明している通り、海外企業との取引において特に慎重な判断が求められる取引検討時、リスク悪化・要注意先特定時には、「デフォルトリスク」「コンプライアンスリスク」「カントリーリスク」という3つのリスクをチェックすることが重要です。
本ページではデフォルトリスク、つまり経営破綻や債務不履行に陥るリスクについて気を付けなければいけない3つのポイントをご紹介いたします。
チェックポイント1 倒産の可能性
デフォルトリスクの3つのチェックポイントの中で、まず最初に気を付けなければいけないのがこの倒産の可能性です。取引先が倒産することで債権の焦げ付きが発生し、自社に大きな影響を及ぼすことになります。この倒産の可能性については、企業調査レポートや与信管理関連のオンラインサービスなどで把握することができます。ポピュラーなチェックポイントであり、すでに対策を取られている企業も多いのではないでしょうか。
チェックポイント2 支払振りの状況
一方、デフォルトリスクの中で見逃されがちなものとしては取引先がきちんと支払いをおこなっているかどうか、つまり支払振りの状況の確認が挙げられます。実は、海外では期日通りにきちんと支払いがおこなわれるケースは多くありません。下の表をご覧になればお分かりの通り、支払い期日が遅れる割合が高い国も多くあります。Dun&Bradstreet(D&B)は特に90日以上の支払遅延をハイリスクとしていますが、当然支払期日が遅れるほど自社への入金が遅れ、財務状態に影響を及ぼす可能性があるため、海外企業との取引においては倒産の可能性に加え、支払振りについても十分に考慮した取引判断が不可欠です。
期日通りに支払いがおこなわれている割合
赤字:50%を下回る国
中国本土 | 台湾 | 香港 | アメリカ | カナダ |
---|---|---|---|---|
56.3% | 77.2% | 26.3% | 59.5% | 33.8% |
ドイツ | イギリス | イタリア | オーストラリア | エジプト |
---|---|---|---|---|
64.0% | 51.5% | 41.1% | 64.7% | 18.4% |
(Payment Study 2024(CRIBIS D&B)より)
チェックポイント3 事業停止の可能性
そして、もう一つ気を付けなければいけないのが事業停止の可能性です。倒産以外でも操業不能、事業停止、活動休止など、企業が取引できなくなるケースはたくさんあります。ここでは、中国を例に事業停止の可能性を把握しておくべき理由をご説明いたします。
まず、日本と中国において2023年に法的倒産した企業数をご覧ください。
2023年に法的倒産した企業数
8,690社
(東京商工リサーチ調べ)7,121社
(中国法院WEBサイトより)
日本に比べ人口も企業数もはるかに多い中国の方が、倒産している数は少なくなっています。実はここに、中国特有のリスクが隠されているのです。
では次に、下の数字をご覧ください。
2023年に中国で
法的な手続きを取らず事業を停止した企業数
(国家市場監督管理総局(SAMR)より、2023年12月時点)
中国では、2023年に事業を停止した企業が約134万社もありました。TSRでも「中国の取引先と急に連絡が取れなくなった」「何の連絡もなく支払いが止まってしまった」といった話を伺うことがありますが、まさにそういった企業がこの134万社に入っているのです。
つまりここから何が見えてくるかというと、倒産と違って焦付債権は発生しませんが、取引先が事業停止に至ってしまうことで販路の縮小や、調達先の喪失といったリスクが発生する可能性があり、海外企業と取引をおこなう企業は倒産だけでなく事業停止の可能性もチェックしておくことが重要だとわかります。
ここまでご紹介した内容をまとめると、デフォルトリスクの把握には倒産の可能性はもちろんのこと、支払振り、事業停止の可能性も考慮して包括的な観点から取引先のリスクをチェックすることで、予期せぬ事態を回避できる可能性が高くなると言えます。
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D&Bの高度な統計予測モデルを用いて算出した指標で、財務内容、支払傾向、事業内容、事業年数、裁判記録を始めとする財務的・非財務的要素を考慮し企業の倒産確率をスコア化しています。
支払振り評価スコア「D&B Paydex」
遅延日数の平均ではなく遅延金額を考慮し、加重平均を出してスコア化しています。
支払遅延発生率予測スコア「Delinquency Score」「Commercial Credit Score」
D&Bが収集している支払振り情報を元に、独自の算定式を使って算出した支払遅延の発生確率の指標。当該企業が今後12カ月以内に重大な支払遅延(90日以上の遅延払い)を起こす可能性をスコア化しています。
存続可能性格付「EMMA Score」
D&Bが当該企業の概要情報、公的記録(裁判記録など)、支払振り情報などのデータを基に統計的に算出した指標。法的手続きを踏む倒産だけでなく、清算手続きを経ずに事業を停止するような可能性も含めてスコア化しています。
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